タイ政府は2025年7月8日、国内でのカジノ合法化を目指す「娯楽複合施設法案(エンターテインメント・コンプレックス法案)」の撤回を正式に発表しました。この法案は、1月に閣議承認されたもので、カジノを含む統合型リゾート(IR)の導入を可能にし、経済再建と観光促進を図る狙いがありました。
しかし、同月初旬に発生したパエトンターン・チナワット首相の停職処分により政局が揺らいだことを受け、政府は法案の審議を延期する決定を下しました。
政治的混乱が背景に
法案撤回の大きな要因となったのは、パエトンターン首相とカンボジアのフン・セン上院議長との電話会談の内容が外部に漏れたことによる倫理違反疑惑です。この件を受け、憲法裁判所は首相の職務を一時停止としました。その結果、政局が不安定となり、与党・タイ貢献党(Pheu Thai)は方針の見直しを迫られました。
副財務相のジュラパン・アモーンウィワット氏は、「これは撤回ではなく延期である」と強調し、「政治情勢が安定した後、適切なタイミングで再提出したい」と説明しています。
カジノはIRの一部、観光振興が目的
法案では、カジノ単体ではなく、ホテルや商業施設、テーマパークなどを含む複合施設内に限定してカジノの設置を許可する方針でした。タイ貢献党は、「違法ギャンブルの抑制、観光活性化、外資誘致」などを目的として掲げており、経済政策の中核に据えていました。
同党は「カジノはあくまで観光産業全体の一部にすぎない」としており、今後も国民への丁寧な説明を進める構えです。
反対世論と連立離脱の余波
一方で、世論調査では国民の間に根強い反対意見がありました。前与党の連立パートナーであったプームジャイタイ党(Bhumjaithai)は、電話会談流出を理由に2025年6月末に連立を離脱し、法案推進の体制が大きく揺らぎました。
宗教的価値観や治安の悪化を懸念する声も多く、特に保守派や農村部を中心に強い反発が見られています。
再提出は未定、IR構想は棚上げへ
タイ政府は今後、法案の再提出時期や修正内容については明言しておらず、2025年後半に予定されていた国会審議や事業者ライセンス発行スケジュールも見直しを迫られる見込みです。
観光がGDPの大きな割合を占めるタイにとって、IR導入は長年議論されてきた経済成長戦略の一つでした。しかし、今回の一連の混乱により、その実現は大幅に遅れる可能性が高まっています。
まとめ
タイのカジノ合法化構想は、今回の法案撤回により一時的に頓挫した形となりました。経済活性化と観光振興を目指す政府のIR政策には、政治的な安定と国民の理解が不可欠であることが改めて浮き彫りになったと言えるでしょう。
参考サイト:NEXT.io


